雇い止めの有効性
期間を定めた労働契約の期間満了に際し,使用者が契約の更新を拒絶することを「雇い止め」といいます。労働期間につき,労使が合意して締結された労働契約は,期間の満了とともに終了するのが原則です。
しかし,更新を繰り返し,①「実質において期間の定めのない契約と異ならない」場合や②有期契約の「更新に対する合理的な期待がある」場合には,解雇に関する法理が類推適用されるので,人員削減を理由とするものであれば整理解雇の4要件を満たすかどうかを判断することになります。
①,②のいずれかに該当するかどうかの判断は,以下のような事情が考慮されます。
(1)仕事の内容が臨時的・補助的か,基幹的か (2)更新の回数 (3)雇用の通算期間 (4)契約期間管理の状況(更新手続きの有無,契約書の有無等) (5)雇用継続の期待をもたせる言動や制度の有無 (6)労働者の継続雇用に対する期待の相当性(他の有期雇用者が長更新を繰り返してきた等) |
「雇止め法理」の法定化
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、平成24年8月10日に公布された改正労働契約法に、そのままの内容で規定されました。
1.「雇止め法理」法定化の概要(第19条) 最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルール。 2.対象となる有期労働契約 ① 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの ★最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)の要件を規定したもの ② 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由(※)があると認められるもの ★最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)の要件を規定したもの 3.効果 上記の①、②のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めが認められない。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新される。 4.必要な手続き 労働者からの有期労働契約の更新の申込みが必要(契約期間満了後でも遅滞なく申込みをすれば条文化されたルールの対象となる)。ただし、こうした申込みは、使用者による雇止めの意思表示に対して、「嫌だ、困る」と言うなど、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもかまわないと解される。 5.備考 (※)1.合理的な理由の有無については、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案される。 2.いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに合理的な理由の存在が否定されることにはならないと解される。 |
雇い止めが無効となったとき
雇い止めが無効であると判断された場合には,従前と同様の労働契約が更新されたものとして扱われます。
女性元講師、女子短大に勝訴「不当な雇い止め」 九州女子短大(北九州市八幡西区)から不当に雇い止めされたとして、元講師の女性(38)が同短大を運営する学校法人・福原学園を相手取り、職員の地位確認や雇い止め以降の賃金の支払いを求めた訴訟の判決が27日、福岡地裁小倉支部であった。 野々垣隆樹裁判長は「雇い止めは合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない」として原告の請求を全て認めた。 判決によると、女性は2011年4月、1年の有期雇用で同短大講師に採用された。当初、「勤務は3年で1年ごとに契約を更新する」と説明を受けたが、12年3月に雇い止めされた。 同法人側は「女性の体調不良や育児のため、業務に重大な支障が生じた」と、契約を更新しなかったことの合理性を主張。これに対し、判決は「原告の健康状態は就労に問題ない程度に良好」と判断。育児に関しても「他の教員に過大な負担を強いたなどの事情はうかがえない」と結論付けた。 同法人側は「主張が認められず残念。判決内容を確認し、控訴について検討したい」とコメントした。 (2014年2月28日22時34分 読売新聞) |
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